2018年11月号室内装飾新聞 リフォームと「古さへの目利き」

リフォームと「古さへの目利き」

 

中古住宅をリフォームして、コストを抑えながら自分好みの住まいへと変える。今の時代、住まいを考える上でとても合理的な手法だと言える。そこでポイントとなるのは、手をかけず「そのまま使える場所」を上手に見つけること。リフォームはメリハリが大事で、コストをかけるところはしっかり、そうでないところは出来る限りそのままに、が良いと思う。コストのかけ処にメリハリが重要なのは、インテリア計画全般に言えることだが、特にリフォームの場合は、メリハリの振り分けを判断するための“古さへの目利き”が鍵となる。上手に活かすと、古さは若い世代に魅力的な“レトロ可愛さ”に、またある時は昭和感漂う重厚さへと変わる時もある。リフォームは新しくするだけが正解ではない、というのが私の中での鉄則になっている。昔の家には、上質な突板の扉や収納も多い。それをそのまま活かし、周囲の壁紙を変えると見え方は随分変わってくる。古さを逆手に取ると、新たな魅力が生まれる。上手な“古さへの目利き”によって、コスト以上の価値が生まれることもある。

さらに、これからの高齢化社会では、敢えて古さを活かしたインテリア空間が必要になってくると感じている。過去の懐かしい思い出を語り合ったり、誰かに話したりすることで脳を刺激し、精神の安定化を図る心理療法の一つ「回想法」。1960年代にアメリカで始まったこの療法は、今、長く続けることで認知機能の改善も期待されているとのこと。生活環境の中で、古い記憶、懐かしさが蘇る感覚を自然に導くために、「古さのある懐かしい空間」へのリフォームが役立つ場面もあるのではないだろうか。人生100年時代。これからのリフォームには、“古さへの目利き”がポイントになりそうだ。

 

2018年11月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

 

 

 

★室内装飾新聞201811月号

 

 

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