「最新のロサンゼルス住宅から」
ここ数年、旬なインテリアスタイルで世界に影響を与えるロサンゼルス。昨年12月、6度目となるロス視察に行き、今まで見た住宅は50軒を超えました。
アメリカでは、インテリアをトータル的にプロデュースする「デコレーター」という職域が確立されていることもあり、細部まで徹底的にこだわったクオリティの高い住宅が数多く存在します。
また、ハリウッド近郊は土地柄、様々な撮影に使用される住宅も多いエリア。実際に生活されている個人住宅をプライベート空間まで(寝室も!)包み隠さず見せて頂けるという、特別なシチュエーションにも恵まれています。
インテリアデザインとリアルな生活空間を肌で感じるこの経験は、私の中の住まいの価値観に大きな収穫を得る機会になっています。
今回印象的だったのは、外観のグレー壁とホワイトのコンビネーションが印象的なケープコッドスタイル(東海岸)の住宅。
アメリカ人の多くが憧れるスタイルと言われる住宅で、一言で表現すると「家族を大事にする家」。アメリカでは住まいを綺麗に設える目的は家族のため、と言われますが、暖炉やキッチン、ちょっとしたコーナーに至るまで、まさにこの住まいは家族のためのクリスマスデコレーション熱が素晴らしかったです。
一方絶景の住宅として、売り出し直前のクールモダンな住宅には圧倒されました。販売価格はなんと3000万ドル(約35億)とか。
光るアメジストの洗面台や壁面の大理石、全て圧巻の仕様です。ただ最高級の立地と素材に囲まれるもののどこか物足りなさが。
人の温かさ、生活感の無さがその家の空気となることを感じた家でした。
逆に古さの魅力を味わえたのは、市の歴史的建造物指定も受けているフランク・ロイド・ライト・Jr設計の家。1929年に建てられた住まいは、幾人かのオーナーを経て今は宝飾デザイナーの方が所有されています。
天井高さも低く、良い意味での古さ(ヴィンテージ)感に溢れ、趣味のアートや、写真、オブジェが家中に飾られています。インテリアとしてスッキリ整い過ぎない、この不揃いな空気感、古さ感に心が安らぎました。
つい時間を忘れその場の時間を感じていたい、、青銅の緑と植栽が交じり合う庭からの眺めもまた落ち着きました。本物のヴィンテージ、歴史のある住まいだけにある独特の空気感に触れたように感じます。
住まいにとって大切なものは何か?今回も居心地の良いインテリアのヒントを学ぶ旅となりました。
2018年2月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中