アウトドア・インテリア
厳しい暑さも落ち着き、そろそろ自然が心地いい季節になる。緑の葉のゆらぎや、風を感じる場所では、特別なことをしなくてもただそこにいるだけで心地いい。まだ一般的になる日は少し先だと感じているが、最近よく耳にする「ワーケーション」という言葉。そのような新しい価値観が生まれる中で、住まいで自然を感じ、楽しみたい!と思う人が増えるのも納得する。夏休みには庭にテントを張って、キャンプやBBQを楽しむ家族も多かったようだ。自然と近いリラックスを住まいで実現する。これからはインドアとアウトドアが共存、融合する「アウトドア・インテリア」が求められるように思う。内や外といった垣根を取り払うと、自由なインテリアの楽しみ方が見えてくる。
例えばアウトドア用の家具を、インドアで使う。アウトドア家具は雨風に強く、水洗いもOKというメンテナンス性の魅力が大きい。私はこのメリットを活かして、福祉施設のエントランスに、アウトドア家具を提案した経験がある。人工ラタンと呼ばれる、樹脂コードを編み込んだソファに屋外用クッションをアレンジ。機能性もさることながら「インドアリゾート」のインテリアイメージに、アウトドア家具がぴったりだった。
内と外が融合するインテリアの魅力を教えてくれたのは、LA住宅だ。一年を通じて温かく、雨がほとんど降らないLAならではの気候が、内と外が融合する開放的な空間文化を育てたのだと感じた。床材や壁材が内も外も同じく統一された家も多かった。また自然光による明るさで十分成り立つよう計画された室内には、照明の存在を感じさせない多くの工夫がある。意匠器具としての照明はデザイン重視とインパクトを。実用派照明は空間に馴染むような間接照明を。ヴィンテージ住宅ほど、天井には一切照明がない家が多かったこともあり、夜のシーンにおいても内と外の融合が計算されていた。
これからは、アウトドアとインドア、まずは今までの概念にある垣根を取り払うことが重要ではないだろうか。「リゾートのようなリラックスを日常の中に感じること」それが、これからのインテリアに求められているテーマだと感じている。キャンドルのゆらぎを楽しめるような、ほの暗いリビングがあってもいい。ダイニングチェアはテラスと兼用、という選び方もある。色や素材使いは、カラフルで斬新な発想、アウトドア的遊び心があればさらに面白い。日常のなかで非日常を楽しむヒントは「アウトドア・インテリア」に隠されている、と感じている。
2020年9月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中