2019年9月号室内装飾新聞「空間のダイバーシティ」

空間のダイバーシティ

「ダイバーシティ(Diversity)」

日本語に直訳すると「多様性」。最近耳にすることが多くなったと思う。

多様な人材が持つあらゆる魅力を、企業の発展や活性化に向けて活用する取り組みは、近年多くの経営者や人事担当者から大きな注目を集めているが、これからは同様に、空間にも「ダイバーシティ」が必要だと私は考えている。

こんな事例があった。男性向きにシックなネイビー、女性向きはボルドーを基調にまとめたインテリアで賃貸物件をつくったが、実際の入居者はその真逆の結果となった。また新婚カップルをイメージしたキッチンが主役の賃貸物件には、料理好きの単身男性が入居したのだ。今はイメージだけで測れない多様なニーズがある。

リフォームの世界も「多様性」の概念が必要だ。さらに言うと、バリエーション豊富な内装材とコーディネート力が欠かせない。特に昔ながらの画一化された中古マンションは、多様性を生み出すインテリアによって、空間が劇的に生まれ変わる。一般的に「アクセント壁」と言うが、例えば「アクセント天井」があっても良いと思う。柄も使ってみると面白い。梁、柱、壁、天井、全て壁紙を変えてみてはどうか。旧空間が白壁のみであれば、印象がガラリと変わるのは間違いない。コーディネート次第で、空間の新たな魅力は無限に広がる。

個人邸はもっと自由に多様性があっていい。あるタワーマンションのお客様宅では、腰高窓に合わせてダイニングテーブルを高めの特注に、椅子もハイスツールを合わせた。夜景を見下ろすためのダイニング席には、一般的なテーブルは当てはまらなかったのだ。(画像①)

これからは“一般的に”という概念を解き放ち、多様性のある間取りやコーディネートから、新しい価値は生まれるのではないだろうか。今までロサンゼルスで50軒を超える住宅を視察したが、「好きな暮らしは自分で決める」そんな想いがどの空間からも伝わってきた。多様性のあるアメリカを訪ねる度に「空間のダイバーシティ」の魅力を感じている。

2019年9月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

室内装飾新聞201909月号

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