フリーマーケットを満喫する!
約10年前から住宅視察のため毎年訪れてきたロサンゼルス。晴天続きの気候によって、窓を開け放つ開放的な空間や、内と外が融合したインテリアを生み出した街から、私はこれまで多くの影響を受けてきた。友人や家族との時間を主に家の中で過ごすライフスタイルも、インテリアが充実している理由だと知った。好きな服を選ぶような感覚で、インテリア選びも生活の一部になっている。壁面は必ず何かが飾られているし、ディスプレイ用小物の数が圧倒的に多い。聞くと、アレンジ上手な達人こそ、安くてよいものをフリーマーケットで見つけているというのだ。ミッドセンチュリーの家具や小物、テーブルウエアなど、あえて使い込まれた古いものを選ぶことは、ヴィンテージな家(=器)に時代を合わせる意味合いもある。まさに暮らし全体をコーディネートするのがLAスタイル。そこで7~8月にかけ2年ぶりに訪れたこの機会にフリーマーケットを満喫することにした。
ロサンゼルスのフリーマーケットは、朝5~6時にスタートし、15時頃まで開催される。とにかく早朝が勝負だ。いいものを誰よりも早く見つけるという目的もあるが、カリフォルニアの日中の日差しはとにかく厳しい。比較的涼しい午前中に行動する方がおすすめである。私がまず訪れたのは、パサデナのローズボールとロングビーチのフリーマーケット。どちらもかなり規模が大きく、約6時間の滞在で一万歩を超える距離を歩いた。それでも全部を見つくすことはできなくて、吟味するには相当な体力と気力が必要だと実感した。
お気に入りの一品を見つけることもさることながら、ショップオーナーとのおしゃべりも楽しかった。京都に20年ほど住んでいたというアメリカ人からは古いいけばなの本(英語版)を譲り受け、日本の話題で盛り上がった。87歳の女性オーナーとは、父親との思い出のつまった80年ほど前のカップについて話をした。「ものは使える限り大切に」という想いが、インテリアとしてつながる瞬間がとにかく楽しい。今日の出会いも一期一会。インテリアはゆっくり時間をかけ、自分らしく作り上げていくもので、その過程にも楽しさがある。そんな思いを巡らせながら、これからもカリフォルニアのフリーマーケットを楽しみたいと思っている。
2022年8月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中