アクティブ・シニアライフ
自分の人生を自分らしく終わりたい。人生100年時代といわれる今、人生の折り返しにさしかかる頃、そう考えはじめる人は多いと思う。人生100年となると長いようであっという間かもしれない。人生の大切な時間をどう過ごし、どう終えていくのか。私はそこに生活環境(インテリア)のあり方が、大きく関わっていると感じている。自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出すための生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)の鍵は、インテリアが握っている、といっても過言ではない。
先日フランス南西部のバイヨン市にバカンス村風のアルツハイマー患者専用医療施設「ル・ヴィラージュ・アルツハイマー」(フランス語でアルツハイマー村の意)が開設されたそうだ。同様の施設として国際的に有名なオランダ・アムステルダム郊外にある「ホグウェイ」(2009年開設)をモデルにしたものである。認知症村・ホグウェイについてはWEBに紹介記事が多数あるので、ぜひ参考にしていただきたい。私は、福祉関係の知人から「日本にもぜひホグウェイのような村をつくりたい!」という熱い想いを伺っていた。いつか現地に行ってみたいという想いはあるものの、しばらく叶いそうにないのが残念だ。同様の価値観を持つ人たちがともに暮らす各コミュニティは、それぞれの生活スタイルに合うインテリアでまとめられ、住民が「我が家」と感じられるような工夫があるらしい。施設であって施設らしくない。個人の想い、価値観を尊重したバリエーション豊富なインテリアが、高齢化社会の革新的な取り組みを支えているようだ。ホグウェイの構想・創立を手掛けたのは2人のオランダ人建築家であることから考えても、理想的なシニアライフ実現には環境の果たす役割が大きいことを物語っている。
暮らしへの価値観や尊厳を保ちつつ、自由な生活を送れることの喜び。鎌倉市で在宅介護の経験を語り部として伝える方がいる。築55年、98歳で亡くなられた祖母(さっちゃん)の自宅を「さっちゃんち」と名付け開放し、老後を地域(仲良し)で支え合う活動に尽力されている。彼女はさっちゃんの孫娘であり保健師である。祖母を一番身近で支えながら、在宅ケアをプロの目線でも見てこられたようだ。先日学びの会に参加させていただいたとき、「おうちの力」という言葉が心に響いた。自分らしさをあきらめない暮らしは、インテリアにもサポートできるのではないだろうか。
今までオフィス中心だった保険会社の不動産投資も、今後は介護施設へと移行されると聞く。新しいシニア住宅が増加することも予想されるが、ぜひインテリアによるQOL向上についても注力して欲しい。環境による人への影響は大きい。最後まで自分らしい、自由な暮らしと環境が、幸せな人生100年時代をもたらすと考えている。
2020年11月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中