2019年11月号室内装飾新聞『「光と内装」の可能性』

「光と内装」の可能性

「光環境」にこだわったリノベーションが完成した。築45年のヴィンテージマンションは、梁や柱型の出っ張りも多く、天井高も低い。床は和室のなごりから段差もある。古くデメリットの多い空間を居心地の良い空間へ、どう再生したらよいのか。その答えは「天井に一切照明をつけないこと」だった。

過去に「天井に一切照明をつけないのが夢」というお客様と出会った。以来、私の中の「光」への取り扱いは大きく変わった。照明は空間をただ明るくするためだけではなく、そこにいる「人」への影響も考えないといけない。片頭痛の誘因となる「光過敏」の存在を知り、光をコントロールすることによって症状を和らげることにも取り組んだ。

人へのやさしさとデメリットの克服をテーマとした今回のリノベーションでは、居室はもとより、水廻り、玄関含め「天井に一切照明をつけない」というルールを徹底した。「光」へのこだわりは、実はメリットが大きい。まず、ホームステージングのように家具や小物で空間を設え魅せることが出来ない場合でも、内装材との光反射を上手に活用すれば、「上質感」や「心地よさ」を伝えるのに多くの言葉を必要としない。特に間接照明に照らされる壁面、天井面の素材選びは重要だが、組み合わせ次第では何倍にも魅力的に見せることができる。まさしく、1+1は2ではなく、3にも4にもなる、コーディネート(調整)の世界である。

さらに「天井高の低さ」も克服したかった。天井に一切照明をつけない空間は、シーリングのような器具が無く体感として窮屈に感じない。マットな質感の壁紙を組み合わせたことで、フワッとした拡散光が天井面全体に広がっている。天井に照明、という「あたりまえ」を止めてみたらメリットの方が多かった、というのが今回の感想だ。

「空間をより広く見せたい」ための答えが「壁紙を白く」では、もったいない。光と内装材との“調整”は、新たなステージング(空間演出)の可能性にもつながると感じている。

2019年11月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

室内装飾新聞201911月号

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