2018年10月号室内装飾新聞「インテリアを研究する」

「インテリアを研究する」

あの高級トースターをプロデュースしたバルミューダから10月下旬、ブルーライトを大幅にカットした子供用デスクライトが発売されるらしい。照明もこれからは “光の質”にこだわる時代。インテリアの商材も「健康」という付加価値によって、商品化がさらに進むのではないだろうか。この新アイテムは高価格ながら、子供の「健康」を意識する親のニーズを捉えて、インテリアの中でどのように広がるのか、今から楽しみである。「健康」という付加価値が生み出す新市場には、暮らしから生まれるニーズと、その根拠となる研究とのつながりが益々重要になると感じている。

去る9月11〜13日、神戸大学で開催された第51回照明学会全国大会で研究発表させていただいた。テーマは「片頭痛患者における有機EL寝室照明環境の検討〜照明デザインから視作業へのアプローチ〜」。昨年、大阪枚方市の戸建モデルハウス(高橋開発)にご協力いただき、リアル空間での実施が叶った研究だった。研究の概要は、面発光で目に優しいと言われる次世代の光源、有機EL照明(通称OLED/カネカ社製)を、寝室に設置。片頭痛患者と健常者を対象に一般的なLEDと比較し、どのような評価が得られるかを検証したものだった。細かなデータ紹介は割愛させていただくが、結論をまとめると、有機EL照明は片頭痛、健常者ともに視作業時の目の負担を軽減するのに望ましい光源であった。“光の質”にこだわる時代の選択肢として、また一つ、新たな情報を得られたのではないかと思う。

私の研究はインテリアに関わる現場人間としての発想から始まっている。目的は一般の方々が、インテリア(生活環境)から健康になるために役立つ情報を見つけ、検証し、裏付け、紹介すること。だからこそ研究テーマは生活に身近なもので、結果の出口も一般向けにわかりやすいものでありたい。より良い環境を提案し人の幸せを願うデザイン業務と、方法は違っても、行きつく想いは同じなのだと感じている。

片頭痛は女性の方に多い。特に20〜40代の女性では約2割とも言われている。子育てや仕事で忙しい日常の負担を、インテリアの工夫で少しでも楽に出来たら嬉しい。実際の生活環境(→8帖の寝室)、実現可能な方法(→家具に取り付けた照明)、よくある日常(→夜間の読書)で行った研究成果が、なにげない日常の中で、人を健康に導くために活かされて欲しいと思う。

学会に参加すると、様々な興味深い研究との出会いも多い。さらにその有益な研究成果をわかりやすく伝えたいという想いも膨らんでくる。現場人間である私ならではの役割を担えるよう、これからもインテリアを研究していきたいと考えている。

2018年10月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

室内装飾新聞201810月号

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