2018年9月1日号室内装飾新聞「“違い”を生み出すフォーカルポイント」

「“違い”を生み出すフォーカルポイント」

その空間ならではの価値、差別化、印象に残るインテリアのための“違い”をつくるには、「フォーカルポイント(=空間の見せ場)」の有無が大きく関係すると思う。私たちが習得するインテリア計画の基礎知識にも必ず出てくる言葉の一つだ。洋室では暖炉やニッチ(飾り棚)、和室では床の間だと言われているが、今の時代、フォーカルポイントとされる対象はもっと自由な解釈で良いと思う。さらに言うと、インテリアにおけるフォーカルポイントは左と右、空間が全く同じ条件なら左側に作る方が効果的、という説もある。何故か?それは、人は図形やイメージ認識に右脳を使う。その右脳が司るのが左目なので右目より左目の方が効果的にイメージを捉えることができるから。あくまでも一般論だが、その空間に立ってみて、自分自身で目に飛び込む側はどちらか、を感じてみると答えは出やすい。それがインテリアとしてのフォーカルポイントの作りどころ、アイキャッチとして魅せると効果的な場所だと言える。私はいつも現場で見せ場の作りどころを、自分自身で感じ、答えを出すようにしている。

海外と日本の住宅を比較すると、明らかな違いは、壁の使い方だと感じる。海外は壁に色がある、素材が違う、アートがあるなど、とにかく白壁のままではなく、余すところなく壁を使って何らかのインテリアの見せ場が作られている。それに比べ、日本は折角の見せ場となりそうな壁があっても白壁のままが多い。時に壁を照らすダウンライトだけが寂しそうに何もない壁を照らしている時さえある。「何を飾ったら良いかわからなくて」 そんなお言葉を聞くと、もったいないなあ、、と残念な気持ちになる。

空間は壁の使い方、フォーカルポイントを作ることで劇的に変わる。住まいなら、家族の写真やお気に入りの写真、ポストカードなどでも充分に白壁を魅せる壁に変えることだって出来る。さらにその土台となる壁を白ではなく、お気に入りの色やトレンドカラーの壁紙で覆うと、素敵なフォーカルポイントとなり、これがあるかないかで、空間は本当に見違えるようになるから面白い。今どきのフォーカルポイントはもっと自由な発想で良いと思う。

先日ある福祉施設のスタッフ用休憩室のリニューアルで、グリーン壁のフォーカルポイントを提案した。元々は入口を入って左側にあるクロス貼りの白壁。休憩室に入ってまず目に飛び込むグリーンのフォーカルポイントが、リラックスモードへ切り替わる効果的な“五感のスイッチ”となることを願っている。

2018年9月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

室内装飾新聞201809月号

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