「不揃いの美にみる今」
最近のインテリアスタイルのキーワードを一つ挙げるとすれば、私の中では「不揃いの美」。
例えばトレンドのカリフォルニアスタイルやブルックリンスタイル。上質な中にもラフ感を忘れず、ダメージ感をこなれた大人感覚で楽しむ。
敢えて外し素材を入れる、照明はサイズを大きめに選ぶ、デザインの違う家具・張り地を合わせる、など。敢えて“不揃い”にすることが、今どきスタイルにまとめるためのテクニックになっています。
そういう目で見れば、“不揃い”は身近に増えているのではないでしょうか?
インテリアで、リラックスを表現するのも、キーワードは“不揃い”です。旬な空間は、整然の逆、“不揃い”にベクトルを向けることで、新しい空間価値が生まれています。
先月、台北でオープンしたばかりのスイーツ専門店に立ち寄りました。こだわりのbutter(バター)を使ったクッキーなどを扱う「but.」というお店。
塗装やタイル、張り地などのメインカラーはトレンド色のシックなグリーン。グレー&ホワイトや明るめの木質がプラスされ、家具スタイルもナチュラルモダンにまとめられています。
今までナチュラルならシルバーとのコーディネートが多かったのですが、ここではカウンター天板、チェアの脚、サイン、至る所にゴールドの金物が多用されています。
さらにシルバーのスツール、チェアやソファはコーナーごとに違うデザインが配置され、まさしく“不揃い”を意識してまとめられた空間でした。
その日は平日にも関わらず店のさまざまな場所で、台湾オシャレ女子たちが代わる代わるフォトジェニックな場所での撮影を楽しむ姿に、スイーツが目的なのか、空間が目的なのか、、不思議な空気感を感じました。
スイーツ店なのに、エントランスはダミーの紳士服店。そこから未来空間のような入り口につながり、店舗を探すというサプライズな仕掛けも!遊び心と不揃いの美に、心くすぐられる空間です。
台北に機会のある方は、ぜひ。
今、「不揃いの美」には人を惹きつける空間づくりのカギがありそうです。
「but.」 www.but.com.tw
2017年10月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中