2022年10月号室内装飾新聞『暮らすように過ごすロサンゼルスVol.3』

LA住宅の光環境を体感する

アメリカの空間は(日本と比較して)暗い、という印象がある。アメリカを旅した方から「ホテルが暗いよね」と聞いたことも一度や二度ではない。そういう私自身も、渡米の機会を重ねる中で、同様の感覚を持っていた。照明への考え方、使い方が日本とは明らかに異なる。私が最もそう感じたのは、LAのヴィンテージ住宅を訪れたときだ。訪ねるのは日中なので、室内は自然光によって十分明るく、照明は点けられていないことが多かった。とはいえ、パッとみて照明器具がほぼ見当たらないことを不思議に感じていた。日本なら当然あるはずの天井に、一切照明がないのだ。その代わりに、必ずと言っていいほどインテリアに合わせた素敵なスタンドライトが複数置かれていたり、壁付けのブラケット照明もあったが、どちらも空間の明るさを十分に満たすとは思えない。想像するところ「夜はかなり暗そうだ」というのが、正直な感想だった。

アメリカの住宅の明るさとは、実際どれぐらいのものなのか。もちろん家ごとに違いはある前提ではあるが、今回あるヴィンテージ住宅のオーナーに、いつも通りにダイニングの照明を点灯してもらい、測定してみることにした。結果は照度が43ルクス、色温度が2650ケルビン。日本の住宅照度基準(*1)にある食卓の明るさ200~500ルクスからすると、かなり暗めの環境だ。また光の色は電球色(オレンジ系)に近い色合いだった。測定時間は夜21時頃。夏は日没が20時頃のロサンゼルスでは、就寝前のひとときである。一方、夜が明けると早朝から強い日差しが燦々と室内にも降り注ぐ。自然光に恵まれた地域だからこそ、住宅やカフェ、公共施設に関わらず、天窓のある空間が多いことにも納得した。

そして日本に戻ると、まず感じたのは日差しの優しさだ。曇り空や、雨も多く、LAとは随分“光環境”が異なる。アメリカのインテリアスタイルに学ぶことは多いが、日本は日本ならではの光環境を意識したアレンジが必要だ。例えば、外光を室内に効率よく取り入れるために、光反射率の高い明るい色味の床材や内装材を使うことも一案だし、日当たりの良し悪しを色選びでカバーする方法は、経験上一定の効果が期待できると感じてきた。

ロサンゼルスで体験したようなメリハリのある光環境は、睡眠の質にも影響することが知られている。しかし、日本では照明を使い分け暮らしている人はまだまだ少数派だ。光は内装材次第で差が出ることは間違いない。QOLを高めるために、インテリアができることは、まだまだあるはずだ。

*1)2018住宅照明設計技術指針/一般社団法人照明学会を参照

2022年10月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

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