2022年4月号室内装飾新聞『エビデンス・ベースド・インテリア』

近年「エビデンスに基づくevidence-based 」という言葉が様々な分野で用いられるようになった。インテリアも例外ではなく、仕事を進めるなかで、その流れを同様に感じてきた。特にいま、インテリア提案のためのエビデンス(根拠)の必要性を強く感じている。

インテリアでは「誰でもわかりやすい根拠」を示すことが重要であり、幅広い情報源が対象になる。感覚論は人それぞれ捉え方に曖昧さが生じるが、特に数字を基にしたエビデンスは、ブレが少ないのがメリットだと思う。過去を遡ると、一室を100とした場合のインテリアカラーの配分(メイン70%、サブ25%、アクセント5%)もその一つとしていたが、最近は光(照明)による睡眠への影響や、筋骨格系不調と環境(家具)など、学術論文から情報を得ることも多い。また、厚生労働省や国土交通省などの統計調査データも役立つ情報源だ。これらはオープン情報なので、アクセスすれば誰でも簡単に入手できる。

「このインテリアを選んだ理由は?」

その答えとして、最新のトレンドだから、素敵だから、可愛いから・・・だけではインテリアを動かせない、と感じたことが分岐点だったように思う。誰もが納得、共感できる根拠となるもの・・・つまり別の視点の情報が必要だと考えた。素敵かどうかといった感覚的な判断は、年齢や性別により全く異なる。以前、ご夫婦に同じように提案しても、反応が全く異なったことを思い出す。ご夫婦揃って納得していただけないと、インテリアは動かなかった。エビデンスという別のアプローチが必要なことを学んだのだ。

インテリアデコレーターとして、国内外の展示会で新鮮なカラーコーディネートや素材の合わせ方、商品知識を学ぶ行動を、技術力のブラッシュアップに役立ててきたし、これからもそのスタンスは変わらない。ただ、いまはこれらの情報を活かすためにもエビデンスが必要だと感じている。

新年度は、これまでとは違った情報源に目を向けてはどうだろう。数値的なエビデンスが役立つ、というのは「インテリアと健康」をテーマにする私の視点だが、インテリアを動かす情報は他にもまだまだあるはずだ。

2022年4月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

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