2021年8月号室内装飾新聞『「協働」がもたらすもの』

「協働」がもたらすもの

夏本番を迎える少し前、あるデイサービスの施設からカーテンを新調したいとご依頼を受けた。
紫外線を浴び続けたレースカーテンの劣化が理由だったが、お伺いすると夏場の暑さが相当厳しいらしい。
大きな窓から日差しをたっぷり取り入れられるのは良いけれど、夏場は暑さも容赦なく入ってくる。
空調の冷たすぎる風は通所される方のお身体にも良くないと、温度設定にも苦慮するとのお話だった。
スタッフの方との意見交換から必要と思われたポイントは3点だ。
①暑さをブロックする ②室内の雰囲気は明るく ③中から見えて、外から見えにくい

解決策に選んだカーテンは、遮熱レースと3色の遮光ドレープ。
広幅の窓は、両開き(2分割)ではなく3分割にして、カラフル感を強調することにした。
日差しを遮っても室内が明るく楽しい雰囲気になるよう、皆さんの好みに合いそうな3色をセレクトした。

一方通行の要望や提案ではなく、共に意見を出し合い作り上げるというスタイルはインテリアにもしっくりくる。
今回は、介護とインテリアの「協働」が必要な答えを導いてくれたのだ。

昨今「協働」という言葉が使われるのは「共同」や「協同」にはない、対等な関係性を含むところが、その理由だと思う。
協働は、同じ目的のために、対等の立場で協力し、共に働くことを意味する。
各々の立場から知恵を出し合い、目的という共通のゴールに向かって力を合わせることは、さまざまな場面での新しいカタチを生み出すための鍵となっている。
医療現場でも「協働」が使われているのをご存知だろうか。
従来は「医療者は医療を患者に提供し、患者は医療を受け取る」という考え方であったものが、いまは「患者は医療チームの重要な一員」として、治療方針の決定や治療への積極的な参加など新しい考え方が支持されている。
患者の価値観や視点は、目的達成のために重要であるからこそ、患者と医療者が協働することの意味は大きい、ということだと思う。

私はいま、テレワーク環境(住環境)をテーマに、医療職と協働し学会発表準備を進めている。
違った視点があるからこそ新鮮で面白く、良いものが生まれる実感もある。
協働がもたらすものの大きさは、ジャンルを問わず可能性を秘めているようだ。

2021年8月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

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