2018年7月1日号室内装飾新聞「デザイナーが知りたい情報とは?」

「デザイナーが知りたい情報とは?」

 

ある家具デザイナーの方から、良い家具選びについて教えていただいた。「家具は見た目も大事だが、大切なのはその中身。ウレタンやバネなど見えない部分こそ使い心地には重要なので、良い家具づくりをしている会社は、中身に熱い。良い家具選びのコツとして、中身について尋ねた時、熱く語ってくれるかどうかが一つの物差しになる。」 なるほど、と思った。一般的な家具選びの際、まず確認するのはデザインやサイズ、色、素材など、いわゆる見た目の情報。カタログも見た目の情報が中心だ。一方実際の使用感、掛け心地となると、それぞれ個々の感覚に委ねられるので、カタログへの明記は難しい。ただ実際に購入したり採用する立場からすれば、本当に知りたいのは実物を使ってみた感想など、カタログからはつかめない“リアルな生の声”ではないだろうか。今はクチコミの時代。評価は人それぞれとはいえ、様々な選択のシーンでクチコミは頼りになる、という声が一般的だ。私も食事どきのお店探しは、食のサイトを利用しクチコミをチェックする。やはり生の声は、色々な意味で表面からは見えない“生きた情報”だと思う。インテリアの仕事も、“生きた情報”こそ重要で、その引き出しが多ければ多いほど、実務に生きると考えている。例えば、私がミラノサローネへ行き始めたきっかけも、雑誌やメディア情報からではなく、現地でリアル体験としてサローネを知りたい、と思ったから。人の波、溢れる人だかりから、今注目を集めるブランドを知った。雑誌の中にある奇抜なデザインの椅子も、実際に掛けてみると(意外に?)心地いいことを体感した。リアルな街の様子を知ることで、多くの“生きたインテリア情報”を得たと思う。同じように、実務においてカタログ以外の情報をどのように入手するか。私は現場で職人さんにお邪魔にならない程度に積極的に話しかけることにしている。特に新素材は扱いやすいか、今までとどう違うか、具体的に質問するようにしている。そこから商材のメリット、デメリットを把握することで、実務のリアルな知識として次につなげることができるのだ。また、メーカーの方から直接聞く“生きた情報”も助かっている。特に他のデザイナーのリアルな感想などは有難い。自分だけの情報に留まらず、多くの現場情報を共有することで、各々のデザイナーが、お互い良い仕事につながれば嬉しい。今はWEBで何でも調べられる時代だからこそ、カタログにはない、生でリアルな情報が貴重で重要だ。一見見えないからこそ価値のある情報。私はこれからもリアルを大事にしたいと考えている。

 

2018年7月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

 

室内装飾新聞201807月号

 

 

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