個性を出して堂々と生きた方がカッコいい。
時代の変化とともに自分自身もそう感じてきたのは、私が生まれながらのクセ毛だったからかもしれない。ほぼ100%近い人にパーマだと勘違いされるほどの強いウェービーヘアは、昔は悩みの種だったが、今ではお気に入りの個性になった。「流行を追い同調する」ことが価値だと思えた頃、当時トレンドだったロングのストレートヘアに近づけようと試行錯誤するものの思うようにならず、随分髪にも無理をかけていた。しかし今はこの髪も他の人にはない「私らしさ」のひとつと思うと、誇らしくさえ思えるようになった。個性は強みになる。さらに自分に無理をさせないスタイルが一番心地いい、ということにも気づくことができた。
インテリアにも同じような流れがあるのではないだろうか。イタリアンモダン、クラシカルスタイル、名作家具のあるインテリア。昔は時代のトレンドこそ、憧れのスタイルだったが、今の時代は多様なスタイルが存在するし、住まいは「自分らしさ」を表現する場である方が、ずっとカッコいいとも思う。思い返すと駆け出しの頃、お客様が迷ったときには、トレンドを語り、売れ筋の壁紙をご提案していたこともあった。しかし今はアプローチを変えている。先ずはお客様自身が「ピン!」とくる壁紙(または色合い)を選んでいただき、それが活きるように周辺の素材を調整(コーディネート)することに重きを置く。お客様の感性こそ大切な個性であり「自分さしさ」を演出するオリジナリティの種。その種を空間として完成させることがプロの役割であり、私の仕事だと考えている。今は「自分らしさ」を出せるインテリアこそがトレンド。そう考えると、情報のリサーチ力もさることながら、お客様の「自分らしさ」を引き出すコミュニケーション能力も重要だと感じる。私の場合、会話の中のちょっとしたフレーズ、好きな番組や食事の話題などからも重要なキーワードを見つけることがある。プロの提案力にとっても、今まで以上に個性が強みになる時代がきていることは間違いない。
2023年2月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中