サステナブルインテリアの可能性
ここのところ「サステナブル(持続可能な)」という言葉をいままで以上に耳にするようになった。トレンドというより時代のスタンダード。今や、わたしたちの暮らしにおける基本的概念になりつつある。
私はそもそも「もったいない思考」が強い人間のようだ。例えばインテリアの仕事のなかでリフォームというジャンルが好きなのは、「古さ」を活かす方法を見つけたい、という想いが強いから。壊して新しいものに丸ごと差し替えると、物事が簡単に進むことはわかっている。しかし二度と再現できない貴重な「古さ」を目の前にしたとき、どうにか残す方法はないものかと考えてしまう。現場で共に悩み、答えを一緒に探してくれる職人さんにはいつも感謝するばかりだ。
昨年末、粗大ごみの日の朝にご近所さんとバッタリお会いした。古い革製のアタッシュケースを手にされていたのに気づき、思わず「宜しければ譲っていただけませんか?」と申し出た。満面の笑みで譲ってくだったご近所さんに、年が明け、オイルメンテナンスで艶が出て綺麗になった姿をお見せしたら、またまた最高の笑顔で喜んでくださった。伺うと、出張先のアメリカで購入した鞄だったらしい。50年余りの時を経て、本物のヴィンテージと出会えたあの日の偶然に感謝した。モノを活かし、受け継ぐことは、心にゆとりを与えてくれる。もったいないという思いは、温かい心の連鎖へとつながってゆくことを感じるからだろうか。
2020年にインテリアによるサステナブル活動「ZAMPU(残布)PROJECT」をスタートした。カーテン縫製や椅子貼りなどの過程でうまれる「残布(ざんぷ)」を活かしたい、と考えたきっかけは、福祉施設の現場経験だった。コーディネート生地をあれこれ広げていると、何人もの入居者の女性から「素敵な生地ね~」と度々声をかけていただいたのだ。確かに、インテリアファブリックはワクワクするような魅力と力を持っている。残布となっても、まだまだ活かせる道があると考えた。2022年ZAMPUは業界の垣根を超え、カリフォルニア生まれのコスメブランド「ベアミネラル」とのコラボレーションにつながった。サステナブルインテリアは、イノベーションを引き寄せる力も秘めているようだ。
2022年2月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中