2021年11月号室内装飾新聞『コミュニケーションとインテリア』

コミュニケーションとインテリア

コロナ禍でリモートが定着してから、コミュニケーションの難しさについて話題になることが増えた。短時間でも心の距離を近づけることができるのは、やっぱりリアル。リモートと併用する中で、そう感じる場面は多いのではないだろうか。だからこそ、貴重な対面の機会は、コミュニケーションにとって今まで以上に重要な鍵を握る場となっている。

リアルには、心の距離を近づけるための「味方」が存在する。その大きな要素となるのがコミュニケーションの場で人を包む空間、つまりインテリアである。

インテリアでは、スムーズなコミュニケーションのために活用出来るテクニックがある。ひとつ目は、家具レイアウトによる座る位置。「90度法」といって、相手と90度の角度で座る位置が、最もコミュニケーションが取りやすい。90度→横並び→対面の順で、親しみやすさが変わるので、自ずと対面しか選択出来ないリモートに難しさがあるのは、理解できる話だと思う。

ふたつ目は、照明や内装の色。コミュニケーションを左右する様々な心理的影響は、この2つの要素が深く関係する。わかりやすい例では、真っ白な内装に白色照明の部屋と、温かみのあるベージュの内装に電球色の照明の部屋を比較した場合、前者は緊張感を、後者はリラックスをもたらす。後者の雰囲気なら…本音を打ち明けたり、和やかに話せたり、と感じる人は多いと思う。またゆっくり話したい場合に選ぶカフェの雰囲気は、少なくとも前者のような照明と内装ではないはずだ。同じ箱(空間)であったとしても、雰囲気次第で話しやすさは変わる。貴重なリアルの機会において、インテリアはコミュニケーションの心強い「味方」になり得るのだ。

 医療の世界では、コミュニケーションの良し悪しが健康アウトカムを左右すると言われている。患者が本音で悩みを話せたり、医師のアドバイスが患者の心に届くかどうかも、良いコミュニケーションが無ければ伝わらない。

これからの新しい社会では、対面の機会はある程度リモートに置き換わるだろう。そうなればリアルの場は貴重なコミュニケーションの機会となり、その瞬間をより充実したものにするためには、「味方」の存在が必要になることは想像に難くない。コミュニケーションが難しい、と言われる時代だからこそ、潤滑油となるインテリアは様々なシーンで重要な役割を担う可能性が大きい。

2021年11月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

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