“古さ”を色で遊ぼう。
今、市場では中古戸建ての流通を促す動きが進んでいる。戸建住宅を売りたい人や買いたい人が相談しやすくする体制づくりや、住宅の劣化具合の調査に対する補助制度など。人口減を見据え、流通が伸び悩む戸建住宅を活用して空き家の増加を防ぐのも狙いだ。これからの時代背景として中古戸建にぜひとも魅力をつくりたいところだが、実際はマンションに比べ和の空間も多く、インテリア的に“古さ”を感じるケースが多い。今の価値観の中では、その“古さ”がマイナスイメージにもつながり、住宅全体が魅力的に映らないことも多いのではないだろうか。 そんな場合、これからは古さに「色」をプラスすることをぜひお勧めしたい。色には、古さに新鮮さを、ワクワク感を、トレンド感を与えてくれる力があると思う。先日、星野リゾートと並びメディアにも取り上げられる人気の温泉宿「里山十帖」(新潟県南魚沼市)にお邪魔した。築150年の古民家を移築したラウンジ空間には、真っ赤なエッグチェアが2脚。スポットライトを浴びて、空間に華を添えている。ここには「赤」しか似合わない、とさえ思える絶妙な空間と赤のバランス。モダンデザインと色が古民家にしっくりと馴染む落ち着いた空間になっていた。ダイニング奥のトイレに入ると、1面のみ、扉と壁面が鮮やかなテラコッタカラーになっている。一般的にみて、斬新な使い方だが、古さのある他の部材と意外としっくり馴染んで木質とも相性がいい。古さと組み合わせることで、この色の新鮮さを改めて感じるような使い方だった。宿の中全体は優しい照明に照らされ、木とタタミが心地よい落ち着いた色合い。そこに時々パッと現れる色の存在が、古さを新しさに蘇らせているような印象を受けた。 “古さ”をどう活かすか。空間再生の分野に色の存在は欠かせないと思う。「古さを色で遊ぶ」ことが、益々新しい価値観の発見につながるように感じている。
2018年5月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中