2020年8月号室内装飾新聞『新しい“現調”様式』

  • 2020.08.17
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新しい“現調”様式

ここ数カ月、バーチャルショールームやインテリアショップ、不動産業界でも動画による内見が広がりつつある。同時にスマートフォンでもクオリティの高い動画が簡単に撮れるようになり、一層身近になってきた。今、目の前にある状況をリアルに伝える手段として、私の仕事にも大きな変化をもたらしているのが動画だといえる。インテリアにとって空間の魅力をリアルに伝えることは重要で、だからこそ写真撮影へのこだわりは大きかった。プロカメラマンにお願いすることもあるが、現場の合間に短時間で撮影しなければならないことも多く、自分自身のスキルを磨くことにも努力した。アングルの取り方や、補正方法をはじめ、特に室内を綺麗に撮るためのカメラやレンズにもこだわった。昔、海外で担当したインテリアが完成した際には、どうしても夜間のいい写真が撮りたくて、一人で一晩中シャッターを切って過ごした想い出がある。そういえばいつも空間が完成したとき、ただただ夢中になれる至福の時間が、写真を撮っている時間かもしれない。

そんな中、昨年手にしたスマートフォンは私にとってかなりの優れものである。超広角の写真や動画が簡単に撮れる。照明のない室内でも、明るさ補正が働き、難しさはない。ただゆっくりと自分の目の向きにスマホを重ねることで、いま目の前にある室内をわかりやすく残すことができる。私の現調スタイルは動画撮影へと変わってきた。

玄関から入り、扉を開けると空間が広がる。各室に入ると床面を注視してみたり、天井面、梁型をフォーカスしてみたり。とにかくデザイン目線で見たいところをスマートフォンで追ってゆく。自然光で色変わりする素材などは、自分が立ち位置を変え360度まわりこむだけで、見え方の違いも捉えられる。実際、家具補修の現調で、キズの具合を工場に伝える時、動画はとても役だった。光を浴びてどう見えるか、今まで一方方向からの写真では判断が難しく、現場への同行をお願いしなければならなかったことも、動画がその役割を果たしてくれる。

特にリフォームでは、図面に細かな梁、柱型などが記載されていないことも多い。そんな梁の存在で、天井なのか壁なのか、壁紙の貼り方の判断に迷う箇所が必ず生じる。それを回避するために現場で多くの写真を撮るのだが、現場に行かなかったスタッフがその写真から状況を解読するのは大変だった。しかし動画はこれらの問題をたやすく解決してくれた。資料として写真が欲しい時には、動画をスクリーンショットすればOK。これまでオフィスに戻ってから、もう少し右側が見たかった、あの角度の写真はない、なんてことからも回避出来るのだ。

コロナ渦において、現調時間、回数、人数を極力抑えるスタイルが感染予防につながると考えれば、動画撮影は「新しい“現調”様式」となり得るのではないだろうか。環境が重要視される変化の中で、密を軽減しながらも仕事のクオリティを下げないためのスタンダードとして、現調スタイルも新しい変化が求められていると感じている。

2020年8月1日号 室内装飾新聞 インテリアトレンド情報に掲載
*尾田恵のインテリアトレンドレポート/月1回連載中

 

室内装飾新聞202008月号

 

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